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第14話 秘密の露呈

Penulis: 釜瑪秋摩
last update Terakhir Diperbarui: 2025-07-21 12:00:36

『おはよう、僕の会わない恋人さん』

 朝一番に届いた拓翔のメッセージに、私は思わず頬が緩んだ。昨日、私たちは正式に「会わない恋人」になることを決めた。その事実が、今朝の私の心をいつものように軽やかにしていた。

「おはよう、私の会わない恋人さん。今日もよろしくね」

 返信を打ちながら、私は鏡を見る。相変わらずの醜い顔も、今朝は少しだけマシに見える。拓翔に愛されているという事実が、私に小さな自信をくれているのかもしれない。

 学校に着くと、いつものように一人で教室の隅の席に座る。周りのクラスメイトたちの楽しそうな声が聞こえるけれど、私にはスマホの向こうに拓翔がいる。それだけで十分だった。

 一時間目の授業中、私はこっそりスマホを机の下に隠して拓翔からのメッセージをチェックした。

『今、なんの授業?』

「現代文。つまらない……」

『僕は数学。先生の声が子守唄みたいで眠くなってる』

 私は小さく笑いそうになって、口元を手で押さえた。拓翔とのやり取りがあるだけで、退屈な授業時間も楽しく感じられる。

『今度、本当に一緒に勉強しない? チャットで』

「いいね。拓翔が先生だったら、きっと楽しく勉強できそう」

『僕のほうこそ。わからないことがあったら、なんでも聞いて。って、僕もわからないかも知れないけど』

「うん、わかった」

 そんなメッセージを打っていたときだった。

「神林さん、授業中になにをしているの?」

 突然、先生の声が響いた。私は慌ててスマホを隠そうとしたが、時すでに遅し。

「スマホは授業中禁止でしょう。後で職員室に来なさい」

 また、やってしまった……。

 私の顔は真っ赤になり、またもクラスの視線を浴びてしまう。特に、彩音の視線が鋭く私を見つめているのがわかって、背筋が凍った。

 昼休み、私は人気のない階段の踊り場に避難していた。職員室で注意を受けたあと、教室にいるのが辛くなったのだ。幸い、前回と違う先生だったから、スマホを没収されずに済んだ。

 そこで隠れるようにしたて拓翔にメッセージを送る。

「また授業中にメッセージを見てたのがバレちゃった」

『大丈夫? かなり怒られたんじゃない? ごめん、僕のせいで。気をつけようって言ったのに』

「うん、ちょっと怒られちゃった……でも平気。拓翔とのメッセージのほうが授業より大切だから」

『そんなこと言わないで。勉強も大切だよ。それに僕のせいで紀子が怒られるのは悲しいよ』

 拓翔の優しさに、私の心は温かくなった。

「今度は気をつける。でも、つい……拓翔と話したくて……」

『僕も紀子と話したい。でも、君が困ることになったら意味がないから』

 そんなやり取りをしていると、足音が近づいてきた。顔を上げると、彩音が階段を上がってくる。

 私は慌ててスマホを隠そうとしたが、彩音の鋭い目がそれを見逃すはずがなかった。

「あれ? 神林さん。こんなところでどうしたの?」

 彩音の声は表面的には優しいが、その奥に冷たいものが潜んでいる。

 昨日まで声をかけてくれていた人とは違う、別の人のように感じた。

「べ、別になにも……」

「スマホいじってたでしょ? さっきも授業中にやってて先生に怒られてたし」

 私は下を向いた。彩音の視線から逃れたかったが、彼女は私の前に立ちはだかった。

「誰とメッセージしてるの? 前に言っていた人?」

「そ、それは……」

「ねえ、まさか、本当につき合っているの? 冗談じゃなくて本当に?」

 彩音の言葉にギクリとして、どう返して良いのか迷った。

「そんなわけ……」

「やだ、図星? 神林さんに本当に彼氏なんてできたんだ? どんな人なのか、今度こそ教えてよ」

 私は必死に首を振った。でも、彩音の目は獲物を見つけた猫のように光っていた。

「見せて」

「え?」

「スマホ、見せてよ。どんな人とやり取りしてるのか気になるもん」

「だ、ダメ!」

 私は両手でスマホを抱きしめた。拓翔とのやり取りを見られるなんて、絶対にダメ。

「なんで? やましいことでもあるの? 変なメッセージを送り合ってるとか?」

 彩音は一歩近づいてきた。私は後ずさりしたが、背中が壁にぶつかった。

「桧葉さんやめて……」

「ちょっと見るだけよ。私たち、友だちじゃない?」

 友だち……前は嬉しく感じた言葉が、今はまったく別の言葉に聞こえる。

 彩音の手が、私のスマホに伸びてきた。

「やめてったら!」

 私は声を上げてスマホを握り締めたけれど、彩音のほうが力が強い。必死に抵抗したにも関わらず、スマホは彩音の手に渡ってしまった。

 ちょうどメッセージを受信して画面が光った。

 そこには、拓翔からの最新のメッセージが表示されていた。

『紀子、愛してる。君が困ってることがあったら、いつでも僕に話して』

 彩音の目が大きく見開かれた。

「愛してる……って」

 私の血の気が引いた。見られてしまった。拓翔との秘密の関係が、最悪の形で露呈してしまった。

「神林さん、本当の本当に彼氏がいるんだ。しかも……」

 彩音は画面をスクロールしはじめた。私は必死にスマホを取り返そうとしたが、彼女は私を押しのけた。

「『会わない恋人』ってなに? 面白いじゃない」

「返して! お願いだから!」

 私は涙目になりながら懇願したが、彩音は私の必死さを楽しんでいるようだった。

「拓翔って人なのね。『真鍋拓翔』……本名まで教え合ってるなんて、本格的じゃない」

 私の世界が崩れ落ちていくのを感じた。拓翔との大切な秘密が、こんな形で暴かれてしまうなんて。

「面白いものを見せてもらったわ。ありがとう、神林さん」

 彩音は満足そうにスマホを私に返した。でも、もう遅い。彼女は拓翔との関係を知ってしまった。

「桧葉さん、お願い、今のメッセージ、誰にも言わないで……」

 私は震え声で頼んだが、彩音の口元に浮かんだ意地悪な笑みを見て、絶望的な気持ちになった。

「どうしようか。会わない恋人だなんて、こんな面白い話、みんなにも聞かせてあげたくなっちゃうじゃない?」

「ダメ! 絶対にダメ!」

「そんなに嫌なの? じゃあ、どうして欲しいの?」

 彩音の目が、悪魔のように光っていた。

 私は理解した。これは脅迫だ。彩音は私の秘密を握って、なにかを要求しようとしている。

「お金なら……」

「お金なんていらないわよ。もっと面白いことを考えてるから」

 そう言って、彩音は去っていった。私は一人、階段の踊り場に取り残された。

 スマホの画面を見ると、拓翔からの心配するメッセージが届いていた。

『紀子、大丈夫? 返事がないから心配になった』

 私は震える指で返信を打った。

「大丈夫……じゃない。彩音……桧葉さんに見られた」

『え?』

「クラスメイト……私たちのやり取り、全部見られちゃった」

 しばらく既読がつかなかった。きっと拓翔も、事態の深刻さを理解しているのだろう。

『紀子、僕がなんとかする』

「どうやって?」

『まだわからない。でも、君を守る方法を考える』

 拓翔の優しさが、今はかえって辛かった。彼にはなにもできない。私たちは会うことすらできないのだから。

 私は涙を拭いながら教室に戻った。彩音は何食わぬ顔で友だちと談笑している。そして、時々、私のほうを見て、意味深な笑みを浮かべた。

 きっと、これは嵐の前の静けさだ。

 私と拓翔の幸せな関係に、暗い影が差し始めていた。

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